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【上勝町】ごみを45分別する必然性と住民に協力してもらうための工夫とは?
2022年5月13日

ジモティーでは、地域課題を解決するべく、全国様々な地域で先進的な活動を行っている自治体や団体にお伺いして、サービス運営に関するヒントや気づきをいただいております。このページでは「ジモティーの地方創成研究所」と称して、先進的な活動を行っている自治体や地域のコミュニティ団体に視察にいった様子をレポートします。

第一回は徳島県の上勝町にお伺いして、上勝町のごみ減量の拠点、ゼロ・ウェイストセンターでごみ減量に向けた活動を視察させていただきました。

上勝町ってどんなところ?

上勝町は、徳島県の中央付近に位置し、人口1,500人ほどの四国で一番小さな町です。日本の棚田百選に選ばれた「樫原の棚田」をはじめとする棚田景観、巨石群と水苔の群生が幻想的な山犬嶽など日本の原風景ともいえる豊かな自然に恵まれています。2003 年、町内から出る焼却・埋め立てごみをゼロにするという目標を掲げ、日本で初めてゼロ・ウェイスト宣言を行いました。

ゼロ・ウェイストとは?

無駄、浪費、ごみをなくすという意味です。出てきた廃棄物をどう処理するかではなく、そもそもごみを生み出さないようにしようという考え方です。

ゼロ・ウェイストセンターは上勝町が推進するゼロ・ウェイストの中心地です。町民は自らごみを持ち込み、できる限りの分別を行うことで、ごみの再利用・資源化を目指しています。ごみの持ち込み以外にも様々な機能を持っており、町民にとっての利便性はもちろん、町外から訪れた人たちがゼロ・ウェイストの理念を学び、世界に広げていける施設を目指して運営しています。

ゼロ・ウェイストセンターの外観

今回の視察では、町全体の活動としてどのような形でごみの再利用・再資源化に取り組んできたかに特に注目してお話をお聞きしました。ジモティーでも昨今自治体とともに、不要品を持ち込めるスポットを運営しており、地域の住民を巻き込んだリアルスポットの運営という点でもゼロ・ウェイストセンターとは共通点があります。

今回、お話を伺ったのが上勝町役場の菅さんとゼロ・ウェイスト推進員の藤井さん。

まずは上勝町のごみとの向きあい方について説明を受けます。

現在、ゼロ・ウェイストの先進的な取り組みが世界中から注目を集めている上勝町ですが、最初から環境意識の高い地域であったわけではありません。

1990年代後半まで公然と家で排出されたごみに火をつけて燃やす「野焼き」が行われており、県から指導を受けていた地域でした。

上勝町のごみ減量の取り組みのターニングポイントは、設置した焼却炉が法改正の問題ですぐに使えなくなってしまったことです。その時、財政上の理由から新しい焼却炉をつくるのではなく「燃やすごみをもっと減らすために、分別をして資源化を進める」決断をしたことが、ゼロ・ウェイストのきっかけとなっています。

分別について、当初から住民の理解を得られたわけではなく、当時の職員は各集落を回って住民理解を促したそうです。地域のリーダーなども、働きかけを行ってくれたことで住民の理解も深まっていき徐々に輪は大きくなっていきました。

現在、「ごみをできるだけ燃やさないために多分別をする」独自のごみ処理は大きな成果をあげる活動となっています。

ゼロ・ウェイストセンターでのごみ分別の際の利便性をあげる工夫

ゼロウェイストセンターは、「?」の形をした施設となっており、半円形の持ち込み場に住民がごみを持ち込む形になっています。半円形の施設にすることで住民は車を横付けする形で、スムーズに分別するごみの集積箇所にアクセスできます。

入口付近ではルールや上勝町のごみ減量活動の歴史が書かれたパネルが掲載されています。

町外から来た、我々のような視察も積極的に受け付けているため、住民がごみを持ち込みする時間帯は「ごみ分別」の邪魔にならないよう視察用のルートが用意されております。ごみ分別のストレスを排除するため配慮された設計となっています。

視察者は塀の脇から分別する場を見ることができます。こちらは主に容器包装類などを集めるコーナーのようです。ごみ分別は現在、45分別しております。例えば瓶だけでも透明な瓶、茶色の瓶、その他の色の瓶とそれぞれに分別する必要があるそうです。理由は瓶をリサイクルする際に違った色の瓶同士では混ぜることができないためだとのこと。リサイクル業者にそのまま資源として引き取ってもらうことが歳出を減らし、歳入を増やすためには必要です。住民は分別したものを洗って持ってくる必要があります。

こちらでは資源化できる紙を回収しています。回収BOXの近くにはそれぞれ、回収したものが町にとって歳入になるのか、歳出になるのか、その金額はいくらなのかが記入されています。住民たちにごみ分別が町を維持していくために必要なことであることを共有し、参加する意味を持っていただくための工夫がされています。

職員の方が乾燥剤の入った袋と乾燥剤を分別しておりました。集めた乾燥剤は肥料として再利用されるとのこと。こちらは職員の方が自主的に実施しているそうで、ごみを減らし、再利用する意識が関係者にいきわたっていることを感じました。職員の方はごみ持ち込みの時間帯は常にいるので、分別に困ったことなどがあればお聞きできる体制をとっているそう。

また、資源物の分別や、量り売りで商品を購入するとポイントがもらえる取り組みも実施しています。ポイント数に応じて、環境に配慮した日用品などと交換することができます。

ポイントを集めて交換できる日用品の一覧表。

また、もしカタログに掲載がなくても、環境に配慮したもので役場に相談して認められれば対象品として追加できる可能性もあるとのこと。町民にとってはうれしいサービスです。

分別のお話を聞くと結構大変な印象を持ちましたが、視察にお伺いしたタイミングでは、住民自らきれいに洗った容器を持ち込んでいる様子を見ることができました。上勝町ではごみ収集車が走っておらず、住民は自分たちでごみを分別して持ってくる必要があります。分別しながらそのままご近所さん同士で井戸端会議となることもある模様。地域に根付いた習慣となっていることが見受けられます。

リユースでもすごい取り組み

まだ使えるものに対してはごみではなく再利用を促進させる活動も行っています。持ち込み場の隣には、「くるくるショップ」というリユースを目的とした施設があります。住民から持ち込まれた食器や洋服が並んでいます。上勝町民がまだ使えるものを無料で持ち込むことが可能です。

持ち帰る際には自ら重量を図って記帳します。現在は、くるくるショップを通じて年間で4.5tのリユースを行っているとのことでした。

家具などの大きなものも取り扱っています。大きな家具などは町内の人だけだとスピーディーに譲渡が進まず、滞留しがちです。引き取りに関しては、町民以外も無料で持ち帰ることができるため、より多くの方にぜひ見に来てほしいとのことでした。

お二人曰く、上勝町には自分たちの町のメリットになることに関して積極的に協力してくれる町民が多いとのこと。上勝町では、ゼロ・ウェイストの動き以外にも、高齢者でも働くことができる葉っぱビジネスや、交通の便がない高齢者のために開始した有償ボランティア輸送事業など様々な先進的な取り組みが行われています。高齢化の進む地域でありながら、地域の中で生き生きと暮らすための新しい仕組みが次々と作られていく要因を垣間見ることができました。

ざっくばらんに様々なお話をお聞きすることもでき、とても有意義な時間となりました。

視察にいってみて

視察に行くまで、上勝町で行っているごみの分別は自分たちの目線でみると想像以上に細かく、住民に負担を与えているのではないかと考えていました。実際にこの分別に至るまでの経緯を聞いたうえで、住民との向き合い方や住民の方の慣れた持ち込みを見て、この土地に根付いたごみとの向き合い方になっていると感じました。

また、このような住民に負担がかかる施策を実施する際には、当事者になる住民の方々の目線に立って、意義やメリットなどを丁寧に説明しながら、主体的に動いていただきやすいような環境を整えていくことが必要となると感じました。

一方で、いかに進んだ施策を行ったとしても、高齢化の進む自治体では地域の担い手を確保することに課題があることも感じました。地域の担い手がいないと、もともと持続できていた活動も維持が困難になる可能性があります。

ジモティーのミッションは地域の中で互助の仕組みとして機能することです。広島県の三次市さんとはすでに取り組みを実施しておりますが、今後も助け合いカテゴリなどの利用をより促進させることで、地域の担い手不足の解消といった部分でも貢献していきたいという思いを強くいたしました。

以上、ジモティーの地方創生研究所、研究員の宮本がお伝えしました。

なお、地方創生研究所では地域の生活課題を解決するため、ともに活動する自治体様や地域活動を行っている団体様を募集しています。もし、一緒に活動することに対してご興味をお持ちの地域活動を行っている団体様や自治体様などいらっしゃいましたら、まずはお問合せくださいませ。

お問い合わせ先:press@jmty.jp